皆さんこんにちは!医学生道場東京校の大島と申します。
日がすっかり短くなり、本格的な冬が近づいて参りましたが、医学生の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
今回の記事では、近年取得者が増加傾向にある医療英語関連資格・USMLEに焦点を当てたお話をしたいと思います。
USMLE (英:United States Medical Licensing Examination)とは、一言で表すとアメリカ合衆国の医師国家試験です。この試験は全3段階に分かれており、アメリカ国内のメディカル・スクールで学んでいる医学生は、国内の医師免許を取得するためにこの試験で3段階全てに合格することが求められます。
また、アメリカで医学教育を受けた学生だけでなく、諸外国で医学教育を受けてからアメリカに移住し、現地で医師として働く場合も同様に3段階の試験全てに合格することが必要です。
受験日程に関しては日本の医師国家試験と異なり、随時受験することが可能となっています。ただし、3段階に分かれている試験のうち、2段階目までの試験であるSTEP1、STEP2までは順番に関係なく受験可能ですが、最終段階のSTEP3については例外的に前段階の試験に合格しないと受験資格が与えられません。試験方式については日本の医学生が3年次、若しくは4年次に受験するCBTと似通っており、現地ではMCQ (Multiple Choice Question)方式と呼ばれています。これはコンピューターで受験生ごとにランダムに問題を出題する方式であり、受験者ごとに異なった順番で試験問題が出題されます。
受験段階ごとの出題内容に関しては、以下のように定められています。
(ⅰ)STEP1
全問題にわたり、基礎医学分野から出題されます。問題は全7ブロックに分かれており、1ブロック当たりの問題数は全て40問以内に収まっています。アメリカ国内のメディカルスクールで学ぶ学生は一般的に2年生終了時に受験するとされている試験です。日本の医学生であれば全ての学年で受験が可能とされていますが、大部分の日本の医学生はカリキュラムの特性上医学部4年次以降に受験するようです。
(ⅱ)STEP2・CK (Clinical knowledge)
2段階目に当たるSTEP2の試験のうち、ここでは臨床医学の知識に関する問題が出題されます。問題は全8ブロックに分かれ、STEP1と同様に1ブロック当たりの出題数は40問以内です。一問一答形式のものではなく、一部の問題では論文を読んだうえでそれに関する設問が出題される、といった形式のものも出題されています。
(ⅲ)STEP2・CS (Clinical skills)
STEP2の試験のうち、臨床技能を問う実技形式の試験です。日本の医学生が受験するOSCEと類似する試験であり、12種類の基本的な症例に関して模擬患者役の人に対し、医療面接、模擬診療、診断を行います。試験を行う会場については予めシカゴ・フィラデルフィア・アトランタ・ヒューストン・ロサンゼルスの5都市と定められており、いずれかの会場に足を運んで受験する必要があります。
STEP1、STEP2の2種類の試験に全て合格すると、次の段階であるSTEP3の受験資格を得ると同時にECFMG certificateという証明書が発行され、これをもってアメリカ国内でレジデント(日本における初期研修医1年目修了程度)として勤務する資格が与えられます。
(ⅳ)STEP3
最終段階の試験であり、総合的な知識と実践に関する問題が出題されます。出題形式については前段階と同様のCBTと類似したものに加え、STEP3に特有のCCS (Clinical Case Simulation)という試験も出題されます。これはコンピューター上で実際の診療を模した問題を、医療面接から診断まで解答するという形式の試験です。これはUSMLEの集大成ともいえる試験であり、これまでに習得した知識を最大限に活用することが求められます。
総じて難易度が高く、容易に取得することが出来る資格ではありませんが、英語力を向上させたい、将来的に海外で医師としてのキャリアを積みたいという気持ちのある学生さんには是非お勧めしたい資格といえます。
最近の傾向として、日本で医学を学んでいる学生が大学在学中にUSMLEの取得を目指すケースが増えているようです。海外志向の学生さんが増加していることも一つの理由として挙げられますが、USMLEを取得するメリットとしては日本国内での医師国家試験対策の基礎力向上、日本よりも進歩しているアメリカの臨床医学にいち早く触れられることがあります。また、日本国内の医師の中で差をつけられることも魅力的と見られているようです。
また、日本国内限定の医師免許のみならず、アメリカでも通用する医療資格を取得したい、といったやる気のある学生さんが取得を目指すことも多くあるようです。
アメリカに留学することを目指している学生さんは、最低限USMLEの各ステップのうちSTEP2のCK・CSの両方を取得する必要があります。日本国内における共用試験に準ずる内容を全て英語で学習・受験することは決して容易ではなく、海外留学を希望する医学生の鬼門となっているようです。アメリカ国内で医学を学ぶ学生にとっても簡単とはいえない難関資格であるため、日本の医学生が受験するとなると難易度は尚更高いでしょう。
しかしながら、USMLEの取得によって日本とは異なる医学教育に触れ、より高度な臨床医学を英語で学習することで大多数の医学生と差をつけられるといった大きなメリットを享受することが可能となります。留学を希望する医学生の方も、またそうでない方も一度は取得することを視野に入れてみてはいかがでしょうか。
USMLEはアメリカ留学を視野に入れている医学生向けの資格ですが、そもそもアメリカを初めとする英語圏諸国への留学・医師として勤務することのメリットは何があるのでしょうか。
英語が世界の標準語という言説は有名ですが、その世界標準語を用いて医学を学び、実際に活用することでより大きな世界で医師としての活躍を目指すことが可能となります。まだ日本国内で医師として働くことしか考えていない、という医学生の方も多くいらっしゃると思います。
しかし、昨今のグローバル化の風潮、日本国内で危惧され始めている医師余りの現状を考慮すると、海外留学を視野に入れることもお勧めできます。特に将来は臨床医として活躍したい、と考えている医学生の皆さんには、是非一度USMLEの取得を考えて頂きたく思います。
アメリカの臨床医学はかなり高度かつ日本とは異なったアプローチをとることもあるため、広い視野や柔軟な考え方を身につけることに繋がるからです。医師という職業は時に幅広い知識を身につけたり、異なる立場の人の意見を取り入れることも求められます。海外経験や外国語学習によって身についた多角的な視点によって、医師としての活躍の場を広げることに繋がることも可能性として考えられます。
例え将来的に日本国内で働くことを決めていたとしても、USMLE取得のための勉強を学生時代に経験することで大多数の医学生と大きく差をつけることができるでしょう。医師免許取得後に出来るだけ高いポストにつきたい、もしくは医師としての実力を着実に高めていきたい、と考えている向上心の高い学生さんには特にお勧めの資格です。
普段から大学で学んでいる医学の勉強だけでもかなりボリュームがあり、両立は容易ではありませんが、大学在学中にSTEP2まで取得する学生さんは複数いらっしゃいます。モチベーションの維持、適切な学習計画の立案により、努力次第で十分取得可能な資格であるといえます。もしこの記事を読んで興味が湧いた、という学生さんがいらっしゃいましたら、是非取得を検討してみてはいかがでしょうか。
今回の記事では、医学生にお勧めの医療英語資格であるUSMLEについてお話させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。
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いよいよ本格的な冬に近づき、感染症にかかりやすい季節となりましたが、体温調節や適切な空調の使用など、工夫して体調管理を行いましょう。日々学習に励む医学生の皆さんを医学生道場スタッフ一同心より応援しております。