こんにちは。医学生道場の代表医師の橋本です。
医学生のお母さんから、次のような御質問を頂きましたので、ご紹介したいと思います。
親御さん
「先生、突然すみません。子供が再試験を抱えてしまいました。今までこんなことが無かったので、どうしたらいいか分からなくて、、、」
橋本
「再試験と言うのは、進級試験の再試験のことですか?」
親御さん
「はい。中学や高校では再試験なんて絶対ありえなかったんですが、医学部に入って5科目も再試験があるなんて言っていて。医学部に入ってから気が緩んでいるんじゃないかと思います」
橋本
「ご本人さんは何て言っているんです?」
親御さん
「周りのやつに比べたら、まだいい方だ、心配しなくて大丈夫だ、とか言っています。先生、医学部の再試験ってそんなもんなんですか?全部必修科目で、落ちたら留年なんですよね?」
橋本
「医学部の中の話って、あまりインターネットでもあまり語られていませんよね。とても狭い世界なので、当然かもしれません。よければ詳しく説明しましょう」
親御さん
「よろしくお願いします」
ということで、今回は医学生道場によくあるご相談の一つである、「医学部に通う息子さん・娘さんが再試験を抱えた時に、親御さんはどうしたらいいのか」という話をコラムにしてみたいと思います。
医学部と言うのはかなり特殊な環境で、進級試験の本試験にしても再試験にしても、他の大学とはかなり様子が違います。まずはこのコラムから情報収集をしていただければ幸いです。
まずは、医学部がどういう所なのかについて、説明したいと思います。医学部の息子さん・娘さんになった気持ちで読んでみてください。
・医学部の中の周囲との、高いコミュニケーション能力が求められる実習(欠席はほぼ不可能です)
・人体について学ぶ医学という特殊性(病んでしまう人は病んでしまうし、実習中に失神してしまう人は失神してしまいます)
・周囲の天才や秀才たちとの蹴落としあい(息子さん・娘さんの性格がよければよいほど、ターゲットになったり、やられてしまう可能性もあります)
・受験時代よりも求められる勉強量(医学部に入るまでを頑張ると決めていた息子さん・娘さんにとっては、かなり酷な話です)
・試験は全て必修科目。一つでも再試験で不合格になってしまえば、留年の可能性がある。(息子さん・娘さんが真面目なほど、プレッシャーになっているはずです)
・試験の作成者は、当然大学の先生。つまり、医学部の試験は、医療の最先端の問題。異常な難しさ。
・本試験の合格者数は、科目によって様々。本試験での合格者が120人中半数という試験もあれば、120人中2人だけという試験もある。
・全ての科目の試験対策に膨大な勉強量が必要なため、戦略的に本試験での合格を諦めるべき科目も存在する。
これが、医学部の試験の特徴です。息子さん・娘さんが医学部受験の時に受けてきた試験や、他の大学の試験とは、あまりにも様子が違うのです。
※関連コラム「受験で培った技術は、進級試験に必要な技術と全く違う!」
当然ですが、再試験になった理由は息子さん・娘さんによって様々です。
息子さん・娘さんの勉強の仕方が悪かったのか、それとも資料を集めることができなかったのか、何か悩みがあるのかなど多種多様です。
そのため、お父さんとお母さんのアプローチの仕方も、当然変わってきます。
ですので、一概に「こうするといいですよ」という方法はありません。
ですが、医学部に通う息子さん・娘さんが再試験を抱えているのが分かっている以上、親御さんとしてもなんとかアプローチしたいと思います。
そこで、私の経験からして、共通してできる助言が一つあります。
それは「とにかく現状を把握するために、優しく話を聞く」ということです。これが、再試験を抱える息子さん。娘さんの親御さんのできる、具体的な方法になります。
「ふむふむ。ふむふむ。ふむふむ」
「なるほど。確かに」
「なんか助けてあげられることはあるかい?」
「頑張っているのは知っているよ」
息子さん・娘さんも、医学生になったからと言って、怒られるのは当然嫌ですが、励まされるのも傷ついたりすることがあります。
そういう時には口を開きづらくなってしまいます。
何か助言をするのではなく、ただただ聞くというのも大切なことだと思います。
しかも、親御さんだったり家族だったりしますと、どうしても距離が近すぎてしまい、意外に耳を傾けることを見失ってしまっていることがあります。
再試験については、息子さん・娘さん本人も語りたがらないことが多い話題ですから、仕方のないこともあります。
もう一つアドバイスをしますと、お勧めは家族での「食事」です。
やっぱり日本人は食事の時に素が出るので、留年の危機であっても、悩みを打ち明けてくれやすい気がします。
医学部の中での再試験の数は、当然少ないに越したことはありませんが、まずは慌てないようにしましょう。
本人なりの戦略があるかもしれません。
ですが、もし本人にも戦略に自信を持つことが出来ていない場合には、危なくなってからではなく、是非早い段階で相談に来てください。
医学生道場は、直前の駆け込み寺の役割もしていますが、早い段階で来ていただいた方が、沢山の選択肢を作れる可能性があります。
例えば、基礎をしっかり作ってから試験勉強にのぞめる、試験前に体力を残しておくなどの戦略的なペース配分を考えることができる、などです。
私がゆっくり話を聞きくことが出来るのが、一番のメリットですね。
※関連コラム「留年しそうな時、早くしないと選択肢が減る!?」
相談するのが遅くて手遅れになることはあっても、早くて問題になることはありません。お困りの方は早いうちにご相談ください。
医学生道場 代表医師 橋本将吉