【医学生道場】医師国試過去問分析第2回「心電図は怖くない!出たら確実に取るを目指す」~虚血性心疾患~
はじめに:心電図は「形」でなく「数字, 規則性, 問題文」で解く
こんにちは!医学生道場です。
突然ですが、
―皆さん、心電図は得意ですか?―
「なんとなく形で分かる気がするけど、いざ問題になると自信がない…」
そんな人も多いのではないでしょうか。
心電図は雰囲気で解こうとすると落とします。
大事なのは「波形の印象」ではなく、
数字(心拍数)・規則性(RR間隔)・問題文から推測する
の3つだけ。
この3つを押さえるだけで、国家試験レベルの問題はほとんど怖くありません。
このシリーズでは、まず基本の心電図「見方」と「考え方」を整理し、
今回は「虚血性心疾患」について解説します!
最後に実際の国試の問題演習もありますので、
自分の目を鍛えて、波形の“雰囲気”ではなく、読み解く力を一緒に身につけましょう!🔥
心電図の読み方🫀
はじめに:心電図の用語を理解する
P=心房、QRS/T=心室です。まずは“何を示す波か”を押さえましょう。
P波
心房の“電気が走る”瞬間を示します
心房が脱分極して興奮します。整ったPが各拍に出ると洞調律と判断できます。
QRS波
心室が点火して収縮を始める瞬間を表します
心室の脱分極です。幅(狭い/広い)で脚ブロックなどの伝導障害を評価します。
T波
心室が回復していく過程を示します
心室の再分極です。形や向きの異常で虚血や電解質異常を疑います。
PQ間隔
洞→房室結節→心室へ届くまでの“待ち時間”を示します
洞結節から房室結節を通って心室へ伝わる時間です。延長や途絶があると房室ブロックを考えます。
QT間隔
心室の“始動から回復まで”を通しで示します
QRSの開始からT波の終わりまでを測ります。延長するとトルサードの危険が上がります(心拍で補正したQTcを用います)。
まずは「心拍数 ➡ 規則性 ➡ QRS幅 ➡ ST/P」 の順番で確認!
① 心拍数 = 300 ÷ RRマス数(大きいマス目)
正常 60–100/分(RR間隔 5~3マス)
頻脈(tachycardia):>100/分(RR間隔 3マス以下)
徐脈(bradycardia):<60/分(RR間隔 5マス以上)
② 規則性(RRが整か不整か)
不整ならまず「細動」を疑う
③ QRS幅(≲0.12s (3マス))
狭QRS=上室性(心房)が多い
広QRS=心室性や脚ブロックを考える。
④ ST・P波・PR/QT
ST上昇⇒「虚血(ACS)」を最優先で疑う
QT延長(補正QTc 0.36–0.44s)⇒TdPリスク(→QT延長症候群)
PQ短縮⇒ デルタ波(→WPW症候群)。 PQ延長⇒ 房室伝導遅延(→房室ブロック)
【必見】国試で“心電図”が出る5大テーマ
虚血性心疾患
☆ 急性冠症候群(ACS):【心筋梗塞(ST上昇型 STEMI)】 / 【不安定狭心症(非ST上昇型 NSTEMI)】
その他の虚血性心疾患:【冠攣縮性(異形狭心症)】 / 【動脈硬化性(労作性狭心症)】
頻脈性不整脈
☆ 発作性上室頻拍(PSVT)
☆ 心房細動(Af)
心房粗動(AFL)
☆ 心室頻拍(VT)
心室細動(VF)
その他の頻脈性疾患
☆ WPW症候群(Wolff–Parkinson–White)
・洞調律
・発作(AVRT/AF)
先天性QT延長症候群(LQTS)
Brugada症候群
徐脈性不整脈
☆ 洞不全症候群(SSS)
房室ブロック I度(AVB I)
房室ブロック II度(Mobitz I / II)
☆ 房室ブロック III度(完全)(AVB III)
電解質異常
☆ 高K血症(Hyperkalemia)
低K血症(Hypokalemia)
低Ca血症(Hypocalcemia)
高Ca血症(Hypercalcemia)
それでは、各疾患の説明について詳しくご紹介していきます。
各疾患の“見る順番” と “押さえる所見” をサクッと整理していきますので、
画像での注目ポイントと、暗記の重要ポイントを見落とさないようにしましょう!
☟☟☟
【虚血性心疾患】
➤急性冠症候群
虚血(急性冠症候群 / ACS)
Ischemia
⭐
急性心筋梗塞(ST上昇型 /STEMI)
心臓の冠動脈が閉塞し、心筋が壊死する
心電図の特徴:
局在性ST上昇+対側鏡面ST低下、経時で異常Q波・深い陰性T波
検査:
確定診断のために❤️🔥【冠動脈造影(CAG)】⇒そのまま治療(PCI)にも行ける!
治療:
[👑1st👑]硝酸薬、アスピリン投与(経口)、ヘパリン投与(静脈)、モルヒネ、酸素投与(SpO2<90%の場合)
[🥈2nd🥈]一次PCI(経皮的冠動脈インターベンション)で迅速再灌流
[慢性期]β遮断薬やACE阻害薬、抗血小板薬を基本。
🔷
非ST上昇型急性冠症候群(不安定狭心症 /NSTEMI) )
冠動脈の血流は低下するが、完全閉塞ではないことが多い
STEMIでは【心筋トロポニンが上昇/下降あり】
不安定狭心症では【心筋トロポニン正常】
心電図の特徴:ST低下やT陰転(原則、持続的ST上昇はなし)
治療:ACSとして、ST上昇型心筋梗塞と同様に抗血小板・抗凝固療法。(高リスクでは早期カテ)。※血栓溶解は適応外!
◎なぜそうなる?病態を簡単にして理解しよう!
疾患を理解するときは、
「病態を自分の言葉で一行で言い換えること」
が何よりも重要になってきます。
理由は単純で、「原因→機序→所見→治療」の線を語れる軸ができるからです。
たとえば心筋梗塞なら——
「冠動脈の急な血栓閉塞 → 心筋が酸素赤字(虚血→壊死)→胸痛と心電図変化」
だから治療は「抗血小板+抗凝固」で血栓拡大を止めつつ、可能な限り速く再灌流(一次PCI)を行う。
酸素は低酸素時のみ!
と15秒で言い切ることができます。
この“15秒の芯”があるだけで、病態がしっかりつかめると思うので、どんどん取り入れていきましょう🔥
ⓘ 項目をタッチ / クリックすると短い説明が開きます。ぜひ見てくださいね。
心電図の“なぜ”
ST上昇はなぜ起こる?
心筋の表面まで“広く深く”酸素が足りなくなり(貫壁性虚血)、電気の基線が押し下げられて
見かけ上STが上に跳ねて見えるから。
対側のST低下(鏡面変化)は?
障害部位の“反対側”では電流の向きが逆に現れるため、鏡に映したようにSTが下がる。
広い虚血のサイン。
異常Q波は何を意味?
心筋が死んで電気を通さないと、最初の向きが深くマイナスに引かれ
深いQが固定化する=既往の壊死の跡。
深い陰性T波は?
虚血後に再分極の向きが乱れるため、回復の波(T)が反転して深くなる=
心筋がダメージから回復途中のサイン。
疾患の病態(超かんたん解説)
急性心筋梗塞ってどんな病態?
心臓に血を送る“冠動脈”がいきなり完全につまる→その先の心筋が強い酸欠になり、細胞が死に始める病気(すぐに血流を戻す治療が必要)。
NSTEMIや不安定狭心症の病態は?
血管の中のコブ(プラーク)が割れて小さな血栓ができ、血の通り道がせまくなる病気。
NSTEMI:せまくなって一部の心筋が壊れる(心筋ダメージの検査が陽性)。
不安定狭心症:痛いが心筋は壊れていない(ダメージ検査は陰性)。どちらも完全につまってはいない状態。
治療の“意味”
硝酸薬(ニトロ)
静脈を広げて心臓への血の戻りを減らす+冠動脈も広げる→
心臓の酸素消費を下げて痛みを楽にする。
アスピリン
血小板の“くっつき”を止めて血の塊(血栓)を大きくさせない。
最優先で内服。
ヘパリン
凝固カスケードを抑えてこれ以上血が固まるのを防ぐ(静注で素早く作用)。
モルヒネ
強い痛みと不安を抑えて交感神経の暴走をブレーキ→心拍・酸素消費を下げる。
酸素(SpO₂<90%)
低酸素のときだけ投与して、足りない酸素を補う(むやみに投与はしない)。
冠動脈造影(CAG)
どの血管がどれだけ詰まっているかを直視で確認し、次の処置を決めるための“地図作り”。
一次PCI(経皮的冠動脈インターベンション)
「バルーン+ステント」を使って詰まった場所を物理的に開けて血流を戻す最速の治療。救える心筋を増やす=命を守る第一選択!
慢性期:β遮断薬
交感神経β作用を抑えて、心拍と収縮力を少し抑え心臓の酸素消費を節約。再発と死亡のリスクを下げる。
慢性期:ACE阻害薬/ARB
血圧を整えつつ心筋のリモデリング(拡がり変形)を抑える。長期の予後改善。
抗血小板薬(DAPT)
アスピリンにもう1剤を加えてステント内や冠動脈で再び固まるのを防ぐ(再発予防)。
➤その他の狭心症【異形狭心症・労作性狭心症】
異形狭心症(Prinzmetal / 冠攣縮性)
臨床像:安静時・夜間/早朝に多い。冠攣縮で一過性の虚血を生じる。
検査:アセチルコリン/エルゴノビン負荷で攣縮誘発。
📈心電図:発作時に一過性のST上昇を呈し、発作消失で改善。
💊治療:硝酸薬・カルシウム拮抗薬(発作予防/抑制)。※非選択的β遮断薬は攣縮を助長し得るため注意
労作性狭心症(安定狭心症)
臨床像:労作時に胸痛、安静で改善。器質的狭窄が背景。
検査:運動負荷心電図、負荷画像検査、冠動脈CT/造影で評価。
📈心電図:発作時にST低下や陰性T。安静時は正常ことも多い。
💊治療:硝酸薬・カルシウム拮抗薬に加え、β遮断薬が症状軽減/予後改善に有用。脂質管理や抗血小板薬など二次予防も考慮。
共通部分
胸痛コントロールの基本
症状緩和は硝酸薬+カルシウム拮抗薬が中心。
【労作性狭心症ではβ遮断薬が有用】
⚠️ 禁忌(重要)
異形(冠攣縮性)狭心症では
β遮断薬はほぼ禁忌:
交感神経α1を相対的に増幅させ、攣縮を悪化させるおそれがあるため、硝酸薬+Ca拮抗薬を基本とする。
【異形狭心症ではβ遮断薬が禁忌】となることは国試での「禁忌肢」にも含まれてきますので、そこはしっかりと覚えておきましょう。
ⓘ 項目をタッチ / クリックすると短い説明が開きます。必見!
疾患の病態(超かんたん解説)
労作性狭心症の病態は?
動脈硬化で冠動脈がせまくなっており、運動などで心臓が頑張ると血が足りなくなるタイプ。
つまり「使いすぎて酸素が足りない」。
異形狭心症の病態は?
冠動脈が一時的にけいれんしてギュッと細くなるタイプ。
安静時や早朝に起こりやすく、気まぐれに血管が閉じる「スパスム型」。(血管自体はキレイ)
問題演習
まずは『用語・基本知識確認』
問題演習を通して、知識の確認をに挑戦してみましょう!!🔥
医師国試問題に挑戦!
119A31
解答・解説
117A57
解答・解説
次回!頻脈性不整脈❤️🔥🥵
「脈が速い=全部同じ」じゃない!
分脈性不整脈の中でも、心房細動、VT、etc…その違いがスッと分かるように整理します。
波形の“見分けのコツ”を一緒に掴みましょう!
【必見!】循環器 勉強法 FAQ(よくある質問)
📘 循環器の勉強は何をしたらいい?
【全体像を把握する】:
まずはどのような病気があるのか、全体像を理解することから始めましょう。
例えば、このブログに載っている最初に色分けした分類の疾患をしっかり把握することから始めてみましょう!
【分類を意識する】:
分類ごとに分けたら、その疾患がそれぞれどのような機序で起こるのか、このブログの中でもお伝えした『一言説明』を自分でも行ってみましょう。疾患を自分で分類・整理しながら学ぶことで、知識が繋がりやすくなります。
【知識を深める】:
心電図はQBの問題を解いたり、大学病院での実習で実際の心電図を見たりしながら、実際に医師から学ぶ機会を活用しましょう。医学生道場で臨床と絡めた知識を学ぶことで、記憶に残り、実際に使える知識として蓄積されていきます。
📝 循環器のQBは何周すべき?
結論は最低3周!
1周目:全体像を把握(心臓の解剖/各疾患のおおまかな病態・治療)
2周目:分類ごとの弱点克服(誤答の原因を「定義・機序・所見・初期治療」で言語化できるように!)
3周目:定着チェック(誤答肢のなぜ誤りかまで説明できるかを確認)
直前期は「回数別」や模試直前の一言説明カードを作成して仕上げると、本番の思考が速くなること間違いなしです。
🌟 ガイドラインとかって読むべき?
「ガイドラインを読んで、実際はこうやっているんだ~」と俯瞰するのは大いにアリです!
循環器学会はガイドラインを全文公開している数少ない学会のひとつで、この<公式ページ>に疾患カテゴリーごとに分かりやすく整理されています。
目次をざっと眺めると初期治療がずらっと載っており、「こんな治療をしているんだ~」と具体像が掴めます。
もしかすると自大学の先生が作成に関わっているかもしれませんね!その視点で読むと一層興味が湧きますよね🤭
おわりに:虚血性心疾患は難しすぎない!恐れずに知識を復習しよう
さて、医師国家試験過去問分析第2回「心電図 ~虚血性心疾患~」についてはいかがだったでしょうか?
皆さんは病態理解、問題正解までたどり着けたでしょうか?
国試の問題は、一見すると「難しそう」と思えるものでも、
◯病態を“筋道”で理解する
◯知識を“使える形”で覚える
◯演習で“思考パターン”を身につける
この3つさえ押さえてしまえば大丈夫です。
まず原因→機序→所見→治療の流れを結び付け、「まずは簡単に自分の言葉で理解すること」を行いましょう!
さらに、問題を解いた後には、正誤だけでなく選択理由と迷いどころを言語化して、周辺知識までしっかり押さえてくださいね。
しかし、表面的な暗記や印象だけの判断では、確実に得点につながらないこともあるので、 思考のトレーニングをプロと一緒に積んでいきましょう🔥
「なぜその選択肢が正解なのか」だけで満足せず、
「なぜ他の肢は間違いなのか」 まで突き詰めて考えること、そして
「問われ方が変わったら自分はどう対応するか」 まで考える訓練が重要です。
こうした思考のトレーニングを積むことで、どんな問題にも柔軟に対応できるようになります。
ぜひ医学生道場で国家試験対策のプロセスを学びながら、自分の解答スタイルを磨き上げていきましょう🔥
医学生道場では、同じく「医師国家試験」の勉強を乗り越えてきた
先輩医師による具体的なアドバイス、全力のサポートで、皆さんをテスト合格、進級へと導きます💪
歳の近い現役医師だからこそのアドバイス、試験に向けた勉強方法の提案、不安や悩みの相談など、あらゆる面で医学生のみなさんをサポートいたします。
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