【著者紹介】
田邊まき 医学部在学
~過去ブログ~
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医学部の試験や実習の情報を実体験を交えてご紹介します!皆さんと医学生あるあるの悩みを共有しながら一緒に解決できたらいいなと思っています。親近感のあるブログになっているかと思いますのでお気軽にご覧下さい♪

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💡今回のブログのポイント
・症例ベースで学ぶ具体的な勉強法
・実践例:症例をもとに考えてみよう
・アウトプットのコツ
目次
こんにちは、医学生道場です。
臨床実習が始まってからというもの、「知っている」と「使える」はまったく違うことを痛感しています。
教科書で読んだはずの内容も、実際の症例を前にすると頭が真っ白……そんな経験、ありませんか?
私も最初の頃は、指導医に「この患者さんの呼吸困難の原因は?」と聞かれて、「えーっと……えー……」と固まっていました。
頭の中では確かに知識があるはずなのに、それが引き出せない。
「脳内のフォルダが整理されていない感じ」――まさにそんな状態でした。
でも、ある練習法を取り入れてから、知識がぐっと整理されて、診療現場でもスムーズに考えられるようになりました。
その方法が、「症例ベースで知識を統合するアウトプット練習法」です。
これは単なる勉強法ではなく、臨床で思考する力を鍛える方法でもあります。
紙の上の知識を「頭の中で動かす」感覚が身につくので、CBTや国家試験にも役立ちますし、実習でも自信がつきます。
さっそく、「症例ベースで知識を統合するアウトプット練習法」を見ていきましょう!

まず大切なのは、最初から病名を思い出そうとしないこと。
診断名を一発で当てようとすると、どうしても思考が狭くなります。
たとえば、次のような症例を見てみましょう。
症例: 72歳男性。2日前から発熱、咳、呼吸困難。
既往歴: 高血圧、喫煙歴40年。
多くの人は「肺炎」や「COPD増悪」などを思い浮かべるかもしれませんが、ここで一呼吸おいて、まずは「症状から仮説を立てる」のがポイント。
臨床実習で患者さんを担当するときも、最初に症状の経過を整理することが大事です。
私の指導医はいつも、「まず“現場で考える練習”をしなさい」と言っていました。
つまり、机上ではなく、実際の患者像を思い浮かべながら考えること。
症例提示を読むときは、
などを意識して読むと、よりリアルに理解できます。

この段階では、「考えられる範囲を広くとる」ことが大事です。
たとえばこの症例なら、呼吸困難を起こしうる疾患を想起します。
これを口頭で説明できるようにすることが、アウトプット練習の第一歩です。
頭の中だけで考えると、どうしても「わかった気」になりがち。
でも、声に出すと必ず“曖昧なところ”が見えてくるんですよね。
私は実習中、ペアの学生と「仮説トーク練習」をしていました。
症例を1つ決めて、互いに「この患者の症状、どう考える?」と質問し合うだけ。
わずか10分程度の練習でも、思考の筋道を言語化する力がつきます。

仮説を立てたら、それぞれの病態を頭の中でストーリーとして再構築します。
たとえば肺炎なら、
この流れを絵で描くだけでも、理解が深まります。
私はよくノートに“病態メモ”を残しています。
ポイントは、「順番」と「つながり」。
心不全なら、
心拍出量低下 → RAA系活性化 → 体液貯留 → 浮腫・肺うっ血。
この一連の流れをスラスラ言えるようになると、どんな問題でも応用できます。

ここからが臨床思考の醍醐味です。
立てた仮説を「検査」で裏付けていきます。
検査を考えるときのコツは、「仮説を1つずつ検証するつもりで選ぶ」こと。
やみくもに検査を並べるのではなく、「この検査で何がわかるのか?」を意識します。
たとえば、BNPは心筋のストレスを反映するペプチドですが、「なぜ上昇するか」を理解しておくと、ただの数値以上の意味を感じられます。
つまり、検査=病態の“翻訳”なんです。

検査で得た情報をもとに、診断を絞り込みます。
重要なのは、「なぜそう判断したか」を言語化すること。
例:
「胸部X線で心拡大+両側うっ血影、BNP高値、発熱なし → 心不全の可能性が高い」
このように理由づけをセットで言う癖をつけると、思考の透明性が上がります。
実際のカンファレンスやケースプレゼンでは、「根拠のある説明」ができるかどうかが評価されます。

診断が確定したら、いよいよ治療。
ここでも大事なのは「病態と治療を結びつける」こと。
心不全を例にすると:
単に「この薬を使う」ではなく、どの段階に介入しているかを理解することが重要です。
また、治療後のモニタリングもアウトプットの一部です。
「利尿薬を使ったら尿量は増えたか?」「血圧低下はないか?」――こうした“次の思考”を常に持つことが、臨床的な成長につながります。

症例:
65歳男性。ここ数か月、階段を上がると息切れが強くなり、最近では平地を歩くのもつらく感じるようになった。夜間、仰向けで寝ると息苦しくなり、枕を二枚重ねないと眠れないという。さらに数日前から下腿のむくみが増強し、靴下の跡がくっきり残るようになった。
既往歴:
高血圧と糖尿病を10年前から指摘されている。降圧薬と内服治療を継続しているが、最近は体調不良のため内服が不規則になっていた。
このような症状がある場合、まず考えるのは心不全ですが、他にも腎不全や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺高血圧症なども鑑別に挙がります。
特に下腿浮腫は腎疾患や肝疾患でも起こりうるため、単に「むくみがある=心不全」と決めつけないことが大切です。呼吸困難の経過や誘因、尿量、体重変化などを総合的に評価していきます。
・循環器疾患:心不全
・呼吸器疾患:COPD、肺高血圧症
・腎疾患:腎不全
次に病態生理を考えます。心臓のポンプ機能が低下すると、心拍出量(CO)が減少し、全身への血流が不足します。これに対し体は代償的にRAA(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン)系を活性化させ、ナトリウムと水の再吸収を促進します。
その結果、血液量が増加し、一見「循環を保とう」としているように見えるが、実際には心臓への負担を増大させます。これが「体液貯留 → 浮腫・肺うっ血」につながる悪循環です。
さらに交感神経の緊張亢進により心拍数や末梢血管抵抗が上昇し、心臓のエネルギー消費は増加。やがて心筋リモデリングが進行し、慢性心不全へと移行していきます。
心臓のポンプ機能低下→心拍出量低下→循環血液量低下→RAA系活性化→Na、水の再吸収促進→循環血液量増加→体液貯留→浮腫
次に鑑別をするための検査です。以下に行うべき検査を示します!
上記所見より、うっ血性心不全(congestive heart failure)と診断します。NYHA分類では、労作時に強い呼吸困難を認め、日常生活に支障をきたすことからクラスIIIに相当する可能性が高いと考えます。
最後に治療法です。なぜこの薬を使うのかまでしっかり考えましょう!

アウトプットは、特別な環境がなくてもできます。
私のおすすめは以下の3つ:
最初は時間がかかりますが、続けるうちに「脳の中で自動的に症例分析をする」ようになります。
医学の知識は、ただ覚えるだけではすぐに抜け落ちてしまいます。
でも、「症例」という文脈の中で整理すると、知識が線でつながり、実際の患者さんの前でもスッと出てくるようになります。
この3つを意識すれば、「知っている」から「使える」に変わります。
学年が上がるほど、この差がどんどん大きくなると実感しています。
A2. 主に臨床実習中の医学生やCBT対策を始める学年におすすめです。
また、初期研修医や国試対策で「病態がつながらない」「何をどう考えればいいかわからない」と感じる人にも非常に効果的です。
A3. たしかに最初は時間がかかりますが、続けるうちに「思考のパターン」が身につき、短時間でも整理できるようになります。
10〜15分でもよいので、1日1症例を「仮説立案→病態整理→検査選択」まで考える習慣をつけるのがコツです。
A9. 教科書(『病気がみえる』『Stepシリーズ』など)の症例欄、臨床実習で経験した患者さん、またはオンラインの症例データベースが役立ちます。
最近ではAI(例:GPTOnline.ai)を使って、ランダムな症例提示を生成してもらう練習も可能です。