こんにちは。医学生道場の代表医師の橋本です。
先日、ある医学生さんから、次のような質問を頂きましたので、ご紹介したいと思います。
医学生
「先生、医学部がつらいです。つらすぎます。どうしたらいいでしょうか」
橋本
「おお、またストレートな相談だね。何がつらいんだい?」
医学生
医学部の中の進級試験はつらいし、そのための対策の勉強もつらいし、周囲のプレッシャーはつらいし、部活は厳しくてつらいし、クラス内の空気もつらいし、なんとなく将来もつらいです」
橋本
「今の一瞬で6つも医学部のつらさを挙げたね。うん。でも気持ち良く分かるよ」
医学生
「まさか先生まで、医学生はみんな一緒だ、頑張れなんてアドバイスしないですよね」
橋本
「いや、この医学部のつらさは、経験したことのある人にしか分からないでしょ」
医学生
「そうなんです! そうなんですよ! この間は、医学部がつらいなんて、どれだけ贅沢な悩みなんだ、消えろボケなんて言われてしまいました」
橋本
「それは相談する相手が悪かったね、、、」
医学生
「親です」
橋本
「ひえええ、それもまたつらすぎる(´・ω・`)」
周りの理解が得づらいという意味でも、医学部の悩みは本当につらいものですよね。今回は、大学がつらい時にどうしたらいいか、実際の考え方についてのコラムを書きたいと思います。勉強の息抜きになれば嬉しいなあと思います。
目次
医学生道場によくある相談の中で、「大学がつらいんです」と言う方は結構沢山います。そして直接お話をしてみて思うのが、ちょっと疲れすぎていて、そもそも現状の把握がしっかりできていない場合が多いな、という事です。
例として、ある高校生の話をしてみたいと思います。
ある高校3年生の子が、家庭教師であるあなたに「何かがつらくてつらくて、、、」と相談してくれたとします。
その時に、あなたはまず、その子に何と聞くでしょうか。「何がつらいの? 学校? それとも家?」と聞くかもしれません。どのような状況でも、困ったときや悩んだ時には、まずは現状把握です。
そして、それが戦略を立てる第一歩です。では、どうして学校に行くのがつらいのか、をリストアップしてみましょう。以下の中から当てはまっているものはありますか?
・劣等感を感じてつらいです。
・周りにくらべて要領が悪いのでつらすぎです。
・人に頼るのが苦手でつらいです。
・医者に本気でなりたいと思ったことはない事に気づいてからつらいです。
・高校時代に偏差値が高かったから、医学部に進学しただけで、モチベーション的につらいです。
・別に勉強自体が嫌いというわけではないから、なおつらいです。
・親の説得が強かったから進学しただけ。
・何浪もして入ったが、医者になりたかったわけではなかった事に気づいてからつらいです。
・進路転換を考えるぐらいつらいです。
・誰にも相談できないことがつらいです。
・説得を求めているわけではない! 聞いてほしいだけ。だけどその相手がいなくてつらいです。
・親不孝だと思ってしまってつらいです。
・学校を辞めても、別に進みたい道があるわけではないからつらいです。
・医学部に入った理由は、安定していると聞いたからつらいです。
・もう色々と考えるのもつらすぎです。
・てか、軽度うつです。
・コミュ障だから、これだけの時間、医学部って言う閉鎖された環境にいるのがつらいです。
・暗記ゲーを続けていく人生をどうかと考えるとつらいです。
・友達がいなくて、相談できなくてつらすぎです。
・学校ではうまくやっているつもり。だけど表面上でつらいです。
・滑り止めで入った大学だから、やる気が出なくてつらいです。
・精神的に不安定でつらいです。
・いい医者にならなきゃ、と思うとつらいです。
・もう十分親のいう事は聞いたと思っています。自分の人生を生きる事が出来なくてつらいです。
・高い学費と生活費で養ってもらってきたのを考えると、ノーと言えなくてつらいです。
・あと何年、あと何年と、カウントダウンしています。
・海外の大学について調べてみたこともあるぐらい逃げたいです。
・とりあえずどうしたらいいのか分からなくてつらいです。
・「がんばれ!」って言ってほしいわけではないんです!
実はこれらは全て、実際に相談に来てくれた医学生さん達の言葉です。面倒で、時に恥ずかしかったりもしますが、医学部がつらい理由を、まずは言葉にして明らかに出来るといいですね。そうすることで、何を対策すればいいのか、見えてくることがあります。
また、言葉にしていない事で、ただ漠然と悩んでいるという事もよくあります。それは悩む必要が無いのに悩んでいるのと同じ事になります。
とにかく沢山、つらいと思っている事を列挙するようにしてみてください。それでは次に、つらい時にどうしたらいいのか、人にとって様々だと思いますので、一般的な方法について説明したいと思います。
まずは下の図をご覧ください。
横軸を緊急度、縦軸を重要度として、グラフを書きます。そして、リストアップしたものを、それぞれの場所に書き入れていきます。
ここで、緊急度が高い場所には、出来るだけ早く解決しないと、身が持たなさそうなものを書き入れます。
同様に、重要度が高い場所には、急がなくても大丈夫なものではあるが、しっかり解決しないといけない事を書き入れます。
このように、リストアップしたものを分類する事で、自分がどこに焦点を当てればいいのか、はっきり目に見えて分かるようになります。
そうすると、次のような図になります。
では次に進みたいと思います。
次に、つらいことに対応していく順番をつけにいきます。人間の身体はどうしても一つしかなく、物理的に限界があります。また、色々な事を考えようとすると、かえってパンクしてしまうのが人間と言うものです。そこで、はっきり順番をつける事により、一つずつ集中して解決することが可能になります。
順番をつける方法として、また一つポイントがあります。次の図をご覧ください。
緊急度も重要度も大切ですが、時間軸を考えると、緊急度の高い方を優先させるのがポイントです。「重要度の高い辛い事」はなかなか解決できない事も多く、「緊急度が高いけど解決しやすいつらさ」が沢山残ってしまう可能性があるからです。是非、この順番づけにしましょう。
まずは下の図をご覧ください。
これは、時間の流れが組み込まれる考え方です。どういう事かと言うと、先程の話で、現状がどうなっているのかを考えました。今度は、どうなりたいのか、という目標を考えるという事です。
例えば、現状が医学の勉強がつまらなくて大変だ、という事であれば、医学が楽しくなりたいのか、それとも、医学の勉強は最低限で他の楽しい事をしたいのか、少し先の未来を考えてるという事です。それが目標となります。
そこまで出来れば、後は流れるような作業です。次の図をご覧ください。
この図が示しているように、課題と言うのは、目標と現状の「ギャップ(gap)を埋める作業」の事を言います。この課題をどんどん解決していくことが出来れば、いずれ目標に到達する事が出来ます。すなわち、つらくない、悩みの無い状態になる事が出来るというわけです。
そしてこの図を、②でつけた順番通りに、3つまで作成します。これがポイントです。
人は、多すぎる課題に対しては、モチベーションを失ってしまいます。遠い未来に対してのアプローチをすることが苦手なのです。そこで、あらかじめ図は3つまでに絞って、それらの課題を全力投球で解決していきましょう。4つ目以降は、それらが終わってからでも大丈夫です。
さて、そこまで出来れば、後は全力投球です。ガンガンやっていきましょう!、、、と言いたい所ですが、もう一つポイントがあります。それは、人は必ず時間が経つにつれて、モチベーションが薄れていくという事です。
モチベーションが必ず薄れてしまうのを前提に、どのように課題をこなしていくのかという問題です。そのためには様々な方法があります。
一つは「内的報酬」という「内側からのやる気」を利用する方法です。例えば、「これは楽しそうだ」と言うような、知的好奇心などのことを言います。
もう一つは「外的報酬」という「外側からのやる気」を利用する方法です。例えば、それが終わったご褒美を自分にあげるといったものです。
これらをうまく組み合わせる事が出来れば、モチベーションの維持や継続は簡単になります。これについては、「医学生やる気強化法」という本にまとめていますので、興味があったら読んでみてください。
ちなみに、この戦略を立てる方法を「戦略論」と言い、可愛い生徒ちゃんの勉強戦略や、ビジネスにおける事業計画や、患者さんの治療計画を立てる時にまで有効な方法です。是非身に着けてみてほしいなあと思います。
相談するのが遅くて手遅れになる事はあっても、早くて問題になる事はありません。お困りの方は早いうちにご相談ください。
医学生道場 代表医師 橋本将吉