皆さんこんにちは!医学生道場東京校の大島と申します。
日没が随分と早くなり、季節が冬に近づいていることが身に染みて感じられる時期となりましたが、医学生の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
今回の記事では、医学部の6年生が大学卒業後に初期研修医として勤務する病院を決定するイベント、いわゆるマッチングについてお話します。
医学部以外の学部、または特定の分野の職業に就くことを目的としない学部に在籍している大学生は、多くが卒業1年前より就職活動を行います。志望先は民間企業、公務員等と幅広くありますが、大学卒業後更に大学院への進学を希望しない限り、在学中に1年前後の就職活動期間を設けることがほとんどです。対して、医学部といった高度に専門性のある学部については、卒業年度の最後に国家試験を受験し、合格点に達した学生に資格が付与されます。そして、付与された資格を活用して専門職に就く、といった流れで就職するのです。医学部の場合は卒業年度の最後に医師国家試験を受験し、合格点に達した場合は学生に医師免許が正式に付与されるといった流れをとります。
医学部において、マッチングとは医師国家試験合格後、医師免許を取得した際に初期研修医として勤務する病院を正式に決定するイベント、いわば医学生の就職活動といえるものです。一般的な就職活動においては、活動を行う学生さん全員が企業からの内定を頂けるものではありませんが、医学部における病院と医学生のマッチングでは、その年の医学部卒業生全員が選ばなければどこかしらの病院から内定を頂くことが出来ます。しかしながら、本来第一希望としていた病院で勤務することが出来る方は決して多くありません。選ばなければ確実に勤務先が見つかる一方で、自分自身の希望が必ず通るということは決してないのです。少しでもご自身の希望を通せるよう、毎年多くの医学生がマッチング対策に力を入れています。
マッチングへの参加方法については、6年生に進級した際に大学より正式にマッチング用のIDが発行され、そのIDを用いて「医師臨床研修マッチング協議会」のホームページに参加登録を行うことで正式にマッチング参加の準備が整った状態となります。その仕組みとしては、まず第一に医学生側が初期研修先として選びたい病院を順位をつけてコンピューター上で提出します。それに対し、病院側では採用したい学生を順位をつけてコンピューター上で提出します。学生側が志望した病院の順位と、病院が提出した学生の順位が一致すれば見事マッチング成功となり、学生は晴れて病院から内定を貰うことができます。病院ごとに一定の定員が設けられているため、定員を超過した場合や学生側の志望する病院の順位が病院側の提出した順位と比較して高かった場合はアンマッチとなり、学生は不採用となります。しかしながら、もしも一回目のマッチング期間でアンマッチとなってしまった場合でも、複数回の募集期間が設けられているため、二次募集、もしくは三次募集期間で定員を充足していない病院の中から改めて志望する病院を申告・提出すれば問題ありません。加えて、既にマッチングした病院の内定は辞退することが出来ない為、志望していない病院はマッチング先に登録しないことも重要です。
また、マッチングの際に病院側が学生ごとに順位をつけるに当たっては、独自の採用試験を行う場合が多くあります。大部分は面接試験のため、事前に対策を行うことが十分に可能です。6年生に進級する前から病院見学、面接対策を独自に行うことでアンマッチを防ぐよう努めている学生さんの割合が年々増加しているようです。5年次から臨床実習が開始し、多忙な生活を送ることになるため、CBT・OSCE合格直後の4年生後期からマッチング対策を始める学生さんも少なくありません。すぐに候補となる病院を決定するためにも、事前の情報収集を早めに行っておくことをお勧めします。
マッチングに際して、ほとんどの学生さんはマッチング先を決定するために予め病院見学を行います。多くの場合は見学先で期間が制限されており、5年生の夏休み・冬休み中、若しくは4年生と5年生の間の春休み中といった場合が多いようです。見学に積極的に参加することによって病院の関係者の方々に顔を覚えられ、マッチングにおいてより好印象を与えやすくなるという利点があります。また、実際に研修先の候補として選択する病院の雰囲気を体感することが出来るため、ご自身と病院の相性を確認することも可能です。
病院見学の一般的な流れとしては、最初に病院や実際の研修についての説明を聞き、それから研修医に付き従って診療科を2か所程度回り、見学を行います。見学後に研修医の先生との懇親会が設けられることもあります。また、診療科によっては1日で見学が終了する所と複数日に渡って見学を行う所に分かれます。見学中には、その場で耳にした情報を忘れないようにメモを積極的にとることをお勧めします。マッチングにおける面接の際にとったメモの内容から深入りした話が出来、結果として好印象を与えることに繋がるかもしれません。
また、見学に当たっては事前に病院とのアポイントメントをとる必要がありますが、病院見学は長期休み期間に行うことがほとんどであり、病院見学に参加したい学生さんからの連絡が病院へ殺到しているケースが珍しくありません。そのため、アポイントメントをとる際は病院側の負担を考慮して、早めに行う(見学の1カ月前程度)ことが望ましいとされます。アポイントメントをとる際は、不明点や疑問点を積極的に問い合わせることも忘れずに行いましょう。見学に当たっては学生さんにしっかりと事前準備をすることが求められているため、情報収集や疑問の解消はそれらの一環です。少しでも疑問に感じた点があれば、迷わずに問い合わせを行いましょう。事前に大体の見学スケジュールを立てておくことにより、見学の目的が明確化してより充実した病院見学になります。病院への問い合わせ、情報の収集、見学スケジュールの立案は病院見学における三本柱であるといえます。
病院見学に参加した後は、忘れずにお礼のメールを見学先の病院に送りましょう。可能な限り見学が終了した当日中に送信することがお勧めです。メールを作成する際に宛名として使用する為、見学の際にお世話になった先生や関係者の方の氏名はなるべくメモをとる等して記憶しておきましょう。
この記事を読んで下さっている医学生の方の中には、「選ばなければどこかしらの病院で勤務できるのだから、マッチングは適当にやればいいか」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、その考え方は確実に誤っています。医師免許を正式に取得した後、初期研修医として病院での勤務を行うに当たっては、大学卒業後最初に勤務する病院が将来のキャリアに大きく関わってくるからです。
また、この記事を読んで下さっている学生さんの中には、既に将来医師として専門としたい診療科がある方もいらっしゃると思います。全国各地に存在する病院は高度に専門性を有する診療科があるものが多く、病院独自の治療法や設備・施設を持っている、といった病院も存在します。そうした高い専門性、技術を有する病院で初めて医師としてのキャリアを重ねることで、より同期の医師よりも有利にスキルの向上を目指すことが出来るのです。こうした院ごとの差異を予め確認し、ご自身が初期研修の際にどのような医師を目指したいかを明確にしておくことが重要です。
病院ごとに得意とする診療科、疾患が全く異なっている為、希望する診療科が決定している学生さんは特にマッチング対策に力を入れる必要があります。中でもマイナー科(皮膚科・眼科・耳鼻咽喉科・精神科・泌尿器科・放射線科・整形外科)の専門医を志望している学生さんは、市中病院と大学付属病院とで初期研修時に受けるキャリアの優位性に差が生じるため、注意が必要です。マイナー科の専門医免許を取得するためには2年間の初期研修を受けた後、後期研修を大学病院で受ける必要がありますが、初期研修の時点で大学病院での研修を2年間受けた学生さんと比較すると、初期研修を市中病院で受けた学生さんは大学病院の医局への加入難易度が高くなります。少しでもキャリア形成を優位に進めるためにも、現時点でマイナー科の専門医免許取得を希望している学生さんは情報収集や病院見学を特に積極的に行いましょう。
ここまでの記事ではマッチングの基本、マッチングの重要性に焦点を当ててお話してきましたが、ここからはマッチングで実際に課される面接試験についてお話します。
病院側がマッチングの際に特に知りたい情報としては、学生さんが医学に対してどのような見方をしているのか、病院の志望理由、勤務先として希望する診療科、将来どのような医師になりたいと考えているのかといったものが中心です。毎年多くの志望者がいる病院では、特に病院の特徴や強みと学生さんの性格を考慮し、ミスマッチがないよう慎重に学生さんを選んでいます。医師は日常的に患者さんや一緒に働く医師・看護師と円滑にコミュニケーションをとることが求められる職業であるため、働く医師と病院とのミスマッチは可能な限り避けられるべきと考えられているのです。学生さんだけでなく、病院側で学生さんの選考を行う方々も慎重かつ期待を持って将来の医師を選んでいます。ご自身に合った勤務先を見つけるという意味でも、マッチング、中でも面接対策は特に力を入れましょう。
マッチングにおける面接試験では病院側が知りたいことを予め分析し、自分なりの回答をまとめておくことでよりスムーズに答えることが出来ます。これまでの医学生生活で医学とはどういった学問か、また自分はこれからどのように医学に関わっていきたいのかという思いを言語化し、自分の言葉で回答することが出来るようにしておくことが理想的といえます。アンマッチの可能性をなるべく低くする為にも、ご自身の医学に対する考え方やこれまでの学習に対する姿勢を適切かつ簡潔に言語化できるようにしましょう。
加えて、マッチングで内定先の病院が決まった後は、礼状を忘れずに内定先に送付するようにしましょう。時間をかけて面接を行ってくれた関係者の方々への感謝の気持ちを行動で伝える手段の一つです。大学卒業後に医師、そして社会人の一員として活躍する為に、こうした一般常識としての礼儀作法は常に心がけるべきといえます。
今回の記事では医学生の卒業後のキャリアに影響を与えるマッチングについてお話致しましたが、いかがでしたでしょうか。
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