こんにちは。医学生道場の代表の橋本です。
先日、医学部の生徒さんと、次のような会話をしたのでご紹介したいと思います。
医学生
「先生、医学部に入ってから目標が見えなくなりました。私は何を目指せばいいのでしょうか?」
橋本
「良い質問だ。これまではどうしてた?」
医学生
「医学部に入る事や、点数や順位を目指していました。最近はそれらに意味を感じなくて、、、」
橋本
「なるほど、大きく成長したね」
医学生
「え、成長なんですか?周りは一生懸命勉強しているし、自分は結構ギリギリな感じなんですが、、、」
橋本
「人はね、数字や目の前のゴールに向かっては頑張れるんだけど、抽象的なものに対しては頑張りづらいんだよ。だから、その不思議な感覚は、大学受験の頭から一歩抜け出したということだ」
医学生
「でも、両親や大学の先生は、成績の上位ばかりを目指すように言ってきます」
橋本
「点数が低くてもいいと言っているわけではないが、医学を頑張ったり楽しんだりするためには、それを目指してもいけないんだ! これを機に、何を目指せばいいのか、目標を見直してみよう!」
まず、医学部に入るまでの受験勉強の仕方について、簡単に振り返ってみましょう。医学部に合格するためには、とにかく沢山の点数をゲットする勉強の仕方が正しいものでした。例えば、英語176点、数学184点、物理96点、化学92点であれば、これをさらに増やすことが求められました。ケアレスミスは絶対に許されません。
また、順位も重要になりました。例えば、英語4260位、数学2426位、物理535位、化学2719位であれば、やはり、これもさらに高い順位を目指す勉強の仕方が正解だったのです。
そしてそのための戦略も、比較的シンプルなものになります。
・英語 → 点数を伸ばす → とにかく読んで極める
・数学 → 点数を伸ばす → とにかく大学への数学か青チャート解いて極める
・物理 → 点数を伸ばす → とにかく難系とか重問とかテキストとか回して極める
・化学 → 点数を伸ばす → とにかく重要問題集を回して極める
戦略と目標が明確なものに対して、人は一生懸命頑張ることができます。それが受験勉強だったのでした。
では次に、医学部に入ってからの勉強の仕方について見てみましょう。
医学部に入ってからは、様子がガラッと変わります。
まず一つ目に、点数が全く関係なくなります。60点を超えることが全てに優先します。どんなに一科目の点数が高くても、沢山の科目を落としてしまっては、再試験が待っています。
もう一つ、順位に関しても、意味がなくなります。順位は「優越感(?)」や「先生方や同期からもらえる信頼(?)」に関係があるかもしれませんが、どちらにしても、とにかく一つでも多く落とさないことが最重要です。とにかく留年しないことが重要です。
良く考えてみると、医学部受験とは、勉強の目標や目的が大きく変わっていることに気がつくと思います。そして、目指すものが大きく変わっているのであれば、勉強の仕方も大きく変えなければなりません。具体的に戦略を考えると、例えば、次のようになります。
・医学物理学 → 自分は物選だから極めたい!けれど、、、 → 他に留年科目と呼ばれている科目があるから、最低限の勉強で要領良く終わりにしよう。
・医学統計学 → 理系人間としては凄く興味があるし、極めてみたいけれど、、、 → 専門用語ばかりですぐには理解出来るわけないし、やっぱりそれほど時間をかける勉強の仕方は正しくないよなあ、、、 → 他の人と同じ資料の分だけ覚えることにして、最低限の合格点を目指すことにしよう。
・生物学 → 受験で物理を選択する時に、医学部に入ってから生物を勉強するんだって決めたんだけど、、、 → どうしても自分だけ馬鹿なのかって思うぐらい、授業でも何を言っているか分からない。その上、生物選択のやつらはアドバンテージもあるみたいで、楽しそうに勉強していて辛い、、、 → なんかやる気がなくなってきたなあ → 試験直前に本気を出して頑張るしかない! → 今のところは最低限で、ほかの科目に時間を費やしておこう。
・分子生物学 → とにかく本当に難しい。先生の説明も全くと言っていいほど理解が出来ない、、、 → 時間を大量にかけていたら、さすがに少しずつ分かってきたけれど、試験まで時間がなくなってしまったので、極めるのは諦めるしかない → これぐらいにしておこう。
受験と違って、「一つの科目を極め」たり、「高得点を狙ったり」するのが、正しい勉強の仕方ではなくなってしまうのです。この勉強の仕方の変化に、多くの医学生は混乱してしまいます。その結果、目標を見失ってしまう事にもなっているのです。
医学部に入学する前と後で、勉強の仕方は大きく変わらざるを得ないことがよく分かったと思います。今度は、目標の立て方について考えてみたいと思います。
何度も言うようですが、「極めてやるぜ!」「高得点を目指してやるぜ!」という考え方は、応援したくなりますが、とても大変な目標設定になります。
加えて、医学は日進月歩の学問です。全ての科目がどんどん変化します。また、問題の作成者は、最先端の研究者です。つまり、言い過ぎではなく、それらの目標は不可能に近いのです。
では、医学生は何を目標にして、頑張ったらいいのでしょうか。それは、「医学を体系化すること」を目標にする勉強の仕方です。
医学の体系化とは、「〇〇というのは、突き詰めると〇まるである」と、一言で表現できるようになる、ということです。
例えば、「天気予報は、所詮は確率である」「コーヒーは、豆である」のようなことです。
それらの、いわゆる「本質」の部分を理解しようというものです。その本質を「木の幹」として理解することが出来れば、知識を「枝」のようにつなげていくことが可能です。その本質を理解しようとする勉強の仕方が、効率が良く、暗記量を減らすことができるので正しいのです。
そして、医学部の勉強はすべて、人間の体に関係のあることです。つまり、もし人間の身体について「体系化」し、本質を理解することができれば、たとえどんな質問が来たとしても、湯水のように答えが沸気出てくることになるでしょう。
その本質ってのは何か教えてほしい、という声が聞こえました。
このコラムではヒントを渡しておきます。「人間の体は所詮〇〇の〇である」というものです。これが医学の本質です。その本質を知った後は、それを確認する作業が、医学の勉強の仕方に変わります。答えをすぐには知りたくない人もいると思うので、伏せておきました。他のコラムで嫌と言うほど答えが出てきますので、興味があったら読んでみてくださいね。
※関連コラム「医学部1~2年生で、勉強で意識しておく事は「本質」だ!」
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医学生道場 代表医師 橋本将吉