こんにちは。医学生道場の代表の橋本です。
先日、ある医学生さんから、次のようなお問い合わせを頂きましたので、ご紹介したいと思います。
医学生
「先生、生物選択だったんですが、有利になるかと思ったら、逆に医学部に入ってからも不利な気がしています」
橋本
「あ、物理で苦労してるパターンでしょ。確かに俺もかわいそうだなーって見てた 笑」
医学生
「他人事だと思って~。それでも先生ですかー?それで先生。物理ってどうやって極めたらいいんですか?」
橋本
「いやいや、極めようなんて無理でしょ。物理学が地球に出来てから、どれだけ経ってると思ってるん」
医学生
「確かに、、、。先生、物理を何とかする方法を教えてください」
橋本
「よっしゃ、物理王に、お前はなるっ!」
医学生
「気づいたんですけど、先生ってドラゴンボールかワンピースしか知らないんですか(-ω-)/」
ということで今回は、「医学生で、医学部受験で生物選択だった人が、医学部の中で物理を勉強する方法!」というタイトルでコラムを書いてみたいと思います。是非楽しく読んでみてくださいね(*´▽`*)
多くの医学部受験生が、物理を選択して試験を受けますが、生物を受験科目に選んだ人はいるでしょう。その場合は、大学の物理学の授業や試験やで少し苦労することになるかもしれません。理由は、物理という、「ほとんど触らなかった分野」を勉強しなければならないからです。しかも相手は医学物理学という、医学の基礎となる部分の物理学で、かなり専門的です。一から勉強する覚悟が必要になってきます。
ここで、そもそも「物理学とは何か」を考えてみたいと思います。 物理の漢字を分解すると、「物」の「理(ことわり)」となりますね。つまり、「この物体は、どのような条件下で、どういう動きをするのか?」ということを研究する学問です。これが、「物理学」の「本質」です。
例えば血管の中で、血液がどのような動きをするのか、というのも物理学です。血液は赤血球、白血球、血小板そして血しょうが含まれています。
その粘調性のある液体が、血管の中を流れる時には、流れが遅くなってしまったり(うっ滞)、乱流が起きてしまったり、時には血栓を作ってしまって詰まってしまう事もあります。それらを数字を使ってきちんと見てみよう、というのが医学物理学です。
また、血圧とは何であって、血圧がどのように変化するのか学ぶのも、医学部の物理学です。
血圧は、人の状態や病気を知るために必要な「バイタルサイン」という所見の一つです。痛みがあるときには血圧は上昇しますし、水分不足の時には血圧が低くなったりします。これも、医学物理学を学ぶことでイメージができるようになります。
他にも、放射線がどうして人の身体の中を見る事ができるのか、MRIはどういう仕組みになっているのか、物理は医療にも必要な事が山もりだくさんです。
このように、「今この患者さんの身体の中では、何がどういう風になってるのかな」と想像出来るようになるのが、この医学物理学という学問です。医者になってからも必要な、身体や病気のイメージを持つことができるようになります。
それはいいのですが、ここからが大変です。
人間の身体は物理学と密接に関係しているからこそ、とても広い範囲になっています。沢山の計算をしなければなりません。そこで公式が出てきます。これが厄介に感じる原因の一つです。ちなみに、先輩方に質問すると「ああ、苦労するのは今だけだよ。頑張って乗り越えな」と言われるのは、細かい計算方法や公式を覚えなければならないからです。
物理学では、たくさんの公式が登場します。そして医学部の中での医学物理学の進級試験では、その公式が使えるかどうかを問われることが大半だと思われます。
公式を使いこなすためには、「その公式の成り立ち」から考えていくことが、遠回りなようで一番の近道になります。 公式とは、様々な事象から導き出される、「共通の部分」を形にしたものです。
例えば、簡単に説明すると、「地球上ではリンゴを手から離すと落ちて」「トマトも同じように落ちる」ので、「地球では物が落ちる」という公式ができます。「共通の部分」を抜き出して、形にするというのは、こういうっことですね。法則を見つけ出す感じです。
したがって、「公式の成り立ち」から考えることが、「本質」の理解につながるのです。できることならゆっくり時間をかけて、しっかりと理解し、共通している部分だけを綺麗に抜き出したくなるのが人情ですね。医学部に入った人の多くは、論理的な思考に長けているので、そうしないと歯がゆいという人も多いと思います。
しかし残念なことに、ここで大人の事情が絡んできます。医学生には、時間が無いのです! すべての公式を「どうしてこの形になるのか」という「本質」から考えていくと、恐ろしく時間がかかってしまいます。
つまり、どこかで「これはこういう形なんだ」と割り切っていくことが必要になります。
多くの場合の私たちの目標は、物理学者になることではなく、あくまで医学部をなんとか進級して、目の前の課題を乗り越えて行くことです。
そのためには、この医学物理学という科目に関しては、少し違ったアプローチを考えていきましょう。注意してほしいのは、「諦める」のではなく、全体像を見渡して、「効率」や「要領」を重視しようという考え方です。
残念ながら、「公式の成り立ち」という本質から全てを勉強しようとするには、時間がありません。それでも、その公式を使った問題が解けなければ、単位を落としてしまいます。
そこで、受験生の時に数学をどのように勉強したか、思い出してみましょう。
実は、物理と数学、特に高校数学には共通点が多いのです。
恐らく皆さんは、問題集や学校で配られる大量のプリントを使って、公式を実際に使って問題を解く練習を積んだのではないかと思います。
それと同じように、実際に問題を解きながら、公式を身体になじませていくという、今までの受験勉強の延長で戦ってみましょう。
「まずは、公式を使って解けるようになること」を目標にして、慣れてきて時間があれば「本質の理解」を目指す、という方法です。試験までに時間が無くて、本質を理解できなかったとしても、進級試験自体はクリアできる可能性があります。あくまで完璧主義にならないようにしてくださいね。
ちなみに、勉強する時に利用する問題は、大学の教科書の練習問題でも構いませんし、定期試験の過去問でも構いません。インターネットでは問題の難易度にばらつきがあるので、ちょっと探すのが大変かなという印象です。ぜひ、上手く「割り切り」ながら、少ない時間の中で進級試験に合格し、さらに「本質」の理解を目指した勉強を心掛けてみて下さい(*´▽`*)
相談するのが遅くて手遅れになる事はあっても、早くて問題になる事はありません。お困りの方は早いうちにご相談ください。
医学生道場 代表医師 橋本将吉