こんにちは。医学生道場の代表医師の橋本です。
先日、ある医学生さんから、次のよう相談を頂きましたので、ご紹介したいと思います。
医学生
「先生、学校を辞めたいと思った事? ありませんでしたか?」
橋本
「おお、急にどうしたよ。まあ俺は学校の出席が嫌すぎたから、早く卒業して外に出たいな、と常々思っていた」
医学生
「やっぱりそうでしたか~」
橋本
「でも社会にはタイムカードや上司の目があったけどね(-ω-)」
医学生
「うわあ、現実って厳しい(-_-) 先生、実は医学部を辞めたいんです」
橋本
「なるほど、それでその質問か」
医学生
「はい。沢山勉強をやってきて、周囲の期待にも応え、念願の医学部に入学できました。けど、医学部に入学してみると、何かとても大きな違うものを感じたんです。もしかすると、大学に入学して燃え尽きたのか、価値観が大きく変わってしまったのか、やめたいと考えるようになりました」
橋本
「ふむふむ」
医学生
「せっかく入った医学部をやめたいなんて言うと、ふざけるなと言われそうですが、真剣に医学部を辞める事を考え始めました。ですが、社会的にも経済的にも、医学部を辞める事を真剣に考えれば考えるほど、どうすればいいのか分からないんです」
橋本
「確かに、医学部に入学すると、医学部に入学する前と比べて、沢山のギャップを感じたって人は多いよな。その気持ちは、俺自身の経験からも、本当に良く分かる。そしてその辞めたくなる気持ちは、経験したことのある人にしか分からないと思っている」
医学生
「先生、本当にどうしたらいいのでしょうか。最近はやめたい気持ちが強すぎて、悩んでしまって医学の勉強も集中できないんです。進級試験の勉強も頑張らなきゃいけないっていうのに、、、考える暇がありません」
確かに、医学部に入学すると、入学する前と比べて、本当に多くの沢山のギャップを感じると思います。
かくいう私も沢山悩みましたし、沢山の同期や後輩に「医学部を辞めたいんだけどどうしたらいいだろう」と相談されたのを覚えています。
また、医学部を経験してなければ、絶対に分かってもらえない悩みやプレッシャーもあります。
だからと言って、医学部を経験していた先輩方に相談しても、昔と今とでは事情が違い過ぎて伝わらない悩みもあると思います。
また、相談したとしても、「将来が安定している癖に、贅沢な悩みだな」なんて言われてしまう事もあります。ちなみに私は、アルバイト先で信頼できる先輩に相談した所、「世の中なめるな、ふざけるんじゃねえぞ」と怒鳴られ、悲しい気持ちになった事もありました(‘ω’)ノ
とはいえ、医学部をやめる事について深く考えないようにしようというのも無理な話です。
医学的にも、人は考えるのは得意ですが、考えないようにするのはとても難しい事です。困ったことに、医学生は理系人間なので、無意識に考えてしまいます(-ω-)
そこで今回は、「医学部を辞めたい」と考えてしまう医学生に、ちょっと視点を変えたコラムを書いてみようと思いました。
この先、辛い医学部をやめずに、進級試験をなんとか続けて突破して、やっとこさ医学部を卒業し、医師になった場合のメリットを挙げてみます。
医学部高学年になってから、そして医師になってから初めて知る事ができるものばかりを列挙しました。
それを聞いてもらった上での医学部を辞めるという判断は、ある程度十分な情報の中での判断だと思います。今後の将来を考える上での参考になればいいなと思います(^◇^)
目次
医学生は、医学部に入学するまでにすごい辛い思いをして勉強を続けます。
医学部に合格するまでに、周りが遊んでいる中、自分のことを追い込んで、青春も捨てて勉強します。そして、医学部に入ってからも、他の学部の大学生とは違って、6年間という先の見えない長い学生生活を送らなければなりません。
もし学生生活が、部活動やサークル活動やクラス内での人間関係で辛いものであれば、本当に最悪です。そうでなくても、一年間で何十科目という必修の進級試験とその対策の勉強をこなさなければなりません。気づけば、人生すなわち勉強です。勉強、試験、勉強、試験の繰り返しです。生まれてから大学を卒業するまで、一体どれだけの時間を勉強に費やすのでしょうか。
そしてその結果、やっと医師になり、外来や病棟で患者さんを持つようになると、1日50回以上は「ありがとう」って言ってもらえます。
真剣に仕事をすればするほど、ありがとうって感謝されます。それはまるで、「砂漠の中のオアシス」のように感じるんです。
そうすると「どんなにつらくても医者はやめられないな」という気持ちになります。もしそれが無ければ、こんな頭も体も擦り減らす大変な仕事を誰も続けていないですし、誰も医者になることを勧めないのです。
もし身内に医療従事者がいて、あなたが医師になる事を強くすすめられているのであれば、もしかすると、そんな理由があるのかもしれません。
医学生の間は、本当にお金に困ります。
高い部活の活動費、高い書籍代、食費や生活費も馬鹿になりません。大学生になると、小中学生の頃に比べて、どうしてかご両親に「お金をくれ」と言いづらくなるような面も、もしかしたらあるかもしれません。そうなると、「早くお金を稼げるようになりたい」と考えるのは必然的です。
そして、あなたが医師になって、借金や奨学金があればそれを返し終えて、数か月経過して初めて、「あ、人生ってお金じゃないんだ」と実感するかもしれません。
医師は同じ世代の人に比べて、お金に価値観がなくなるのがとてもとても早いのです。さらに、その先の、人生にとって何が大切なのか、お金抜きで本当に考える時を迎えることが出来ます。それはとても大切な事だと思います。
私は家があまり裕福ではありませんでしたので、医学部時代のお金の価値観は人一倍強かったのを覚えています。しかし医師になってから、まるでミニカーやおもちゃに興味がなくなるような、そんな成長して大人になっていくような感覚で「お金」を見ることが出来るようになります。「お金に余裕がある人は、落ち着いているように見える」と言われるのは、そういう理由があるのかもしれません。
初めの2年間の基礎医学は、医学部入学したばっかりで、休憩する暇もなく勉強しなくてはならなくて、しかも本当に難しくて、辛く感じてしまうんですが、なんとか医学部を辞めずに「だましだまし」継続して、壁を乗り越えていきます。
そうすると、その過程で少しずつ仲間が増えていきます。一年に一人ずつぐらい、本当の仲間が出来る可能性があります。
何かあったら腎臓をあげてもいいかな、というぐらい大切な仲間ができるかもしれません。その仲間を大切に思える気持ちは、きっとどんな人生も豊かにすると思います。
仲間が笑わせてくれて、仲間が人生を楽しくしてくれます。気づけば自分がその人の人生を楽しくするかもしれません。違う視点で見てみると、辞めないで続けているのは周りの人も同じなのです。
つまり、同じ苦労を経験している共同体みたいなものなのです。そんな時に出来た仲間は、きっと一生ものです(*´▽`*)
※関連コラム「あまり仲間作りが上手くないんですがいい方法ありますか?」
医学部の入試は一発勝負でした。運も大きく関係しています。ですが、医学部は長い6年以上の長期戦です。もし辞めずにやりきることが出来たら、それは本当の本当の努力家と言えます。医師免許は本当にペラペラの紙切れ一枚ですが、「やめずにつづけたぞ!」という自信は自分の「魂」です。
厳しいことを言うかもしれませんが、自分を導くのは自分の自信だけです。すでに医学部に入学しているのですから、もし自信がなくなっているのでしたら、まずは一つ大きな自信を持ってほしいなと思います。
ちなみに、私は決して医学部をやめる事に反対はしません。私も医師の時間を削って、楽しく医学生道場をやっています。だから偉そうなことは何も言えません(;´∀`) あ、えっと、未だに私の母は「ちゃんと医者やってくれ、頼むから、お願いだから」と言ってきますよ。わら。
※関連コラム「【医学生道場について】なんで医者が教育をやっているの?」
医学部を続けるにしても辞めるにしても、あならならどちらに進んでもきっと大丈夫! 医学部に入学できる根性とパワーのあるあなたなら、今の状況を自分なりに整理して、自分なりの一番いい答えを導き出せるはず! 将来は自分の手にかかっている(*´▽`*)
相談するのが遅くて手遅れになる事はあっても、早くて問題になる事はありません。お困りの方は早いうちにご相談ください。
医学生道場 代表医師 橋本将吉